蓮の寺ー法金剛院

泥中の蓮 〜「煩悩即菩提」の思想〜


仏教では、私たちが生きるこの世の中を「娑婆」と呼び、煩悩や苦しみが絶えない場所と考えます。
しかし、その苦しみの世界からこそ、仏への道が始まると説かれています。

蓮は泥がなければ咲けないように、人もまた苦悩や迷いを経てこそ、真実に目覚めるのです。
これは「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」、すなわち煩悩そのものが悟りへの道になるという教えにつながります。

清らかに、しかし現実に生きる
蓮のもうひとつの特徴は、泥に根を張りながらも、その花びらは一切の汚れを寄せつけないこと。
これは「一切法空」や「無我」といった、仏教の根本的な思想を体現しているとも言えます。

蓮のように、私たちも現実の社会に根ざしながら、心は清らかに保ちたい。
争いや妬み、執着に振り回されずに生きるには、何が必要なのか。
そのヒントが、仏の教えと、静かに咲く蓮の姿の中にあるように思えてなりません。

現代に咲く蓮の花〜

現代社会は、情報も欲望も渦巻くまさに「泥の中」。
ですが、そんな世界にあっても、人は蓮のように美しく生きることができると、仏教は教えてくれます。
苦しみの中でこそ、目を閉じて心を見つめる時間が必要なのかもしれません。

あなたの心にも、一輪の蓮の花が咲きますように。

撮影者プロフィール

京都写真家 武蔵

1998年シンガポール駐在員時代に写真を始め、以来20年以上。京都をこよなく愛し、海外でも作品を展示。国際的視点で活動する写真家。光と影が織りなす瞬間に心を寄せ、普遍的な美の記録に取り組んでいます。

活動の中心は、インバウンド観光の急増などで悪影響を及ぼしている京都の景観を記録保存することに焦点を当てています。風景や人物などジャンルを越えて、被写体の「らしさ」とその瞬間の空気感を大切にしています。訪日外国人向けの撮影や、国内外での展示、文化交流事業への参加など、写真を通じた国際的な表現活動にも力を入れています。


2008年日本写真家協会(JPS)展 入選(プロ写真家への登竜門)

入選作品「祇園雪花」

主な活動内容
・風景撮影
・観光地や伝統文化の撮影
・ポートレート撮影
・商品撮影
・展覧会への参加

使用機材
Canon EOS R6 / その他レンズ各種

展示・掲載実績(一例)
・海外展示:米国 国際交流基金ロサンゼルス日本文化センター主催イベント /在ニューヨーク日本国総領事館主催桜祭り

・集英社 女性誌「éclat」2012年4月号「京都・奈良 桜の絶景めぐり」に掲載 

・パーフェクトポーションズ フォーシーズンズのカタログに掲載 

・海外向けインバウンドプロモーション用写真提供 

京都を撮り続けて20年以上。

光と影の中にたたずむ町家の軒先、静けさに包まれた早朝の石畳、そして暮らしの匂いが残る裏路地の風景。

観光パンフレットに載る“京都らしさ”ではなく、
そこに生きる人の営みと、時を重ねてきた空気―

そうした“ほんまもんの京都”を記録し、伝えていくことが、私の写真家としての使命。

しかし、その京都が、いま静かに壊されつつあります。

京都の町家は、風景ではなく生活そのもの

簡易宿所という名のビジネスによって、“暮らしの記憶”ごと売り飛ばされていく。

観光は京都を支える大きな産業です。それは間違いありません。
しかし、その観光が、「住む人のための京都」から、「見せ物としての京都」へと変質させてしまったのなら、それはもはや文化破壊です。

私が撮りたいのは、“観光地”ではない。
人が暮らし、集い、語らう「生きた京都」。

私はこれからも、京都を撮り続けます。
まだ残された“ほんまもんの京都”を、記録し、伝えていくために。
そして願わくば、「観光よりも、暮らしが主役のまち」に戻れるよう、少しでも力になりたい。

京都は、見るものではなく、生きる場所。

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