中国人起業家増加の背景と課題

近年、日本では中国人による会社設立が急増しています。多くの起業家は真摯にビジネスに取り組んでいますが、一部では法人登記や在留資格の取得のみを目的とした「見せかけの起業」が確認されており、地域社会や取引先との間でトラブルを引き起こす要因となっています。

こうした「実体なき企業」の存在は、賃貸契約の名義貸しや虚偽の取引関係、ビザ取得のためのペーパー会社設立といった形で現れ、日本の信頼あるビジネス環境を根底から揺るがしかねません

本来、日本は起業の自由を保障し、外国人にも広く門戸を開いています。しかし、制度上の隙を突くような起業事例に対しては、現行制度だけでは十分に対応できていないのが実情です。特に、登記や在留資格審査における「事業実態の確認」が形式的に行われている現状には、早急な見直しが求められます。

私たち行政書士事務所は、こうした実態を踏まえ、以下のような制度の見直しおよび規制強化を提言いたします:


【提言項目】

  1. 会社設立時における事業実態審査の厳格化
     - オフィス・店舗の実在確認、事業計画の現実性評価を含めた多面的審査の導入。
  2. 賃貸契約時の貸主に対する注意喚起の強化
     - 名義貸し防止のための不動産業者への指導・啓発の充実。
  3. ビザ審査における第三者評価の導入
     - ビジネス実態を把握している行政書士や専門機関による独立評価制度の検討。
  4. 地域との連携によるモニタリング体制の構築
     - 地域自治体や商工団体と連携し、外国人起業家の事業実態を継続的に把握する仕組みづくり。

実効性ある制度設計と社会全体での情報共有がなければ、個々の善意だけではこの問題に対処しきれません。今後の健全な外国人起業促進のためにも、透明性の高い制度運用と適切な規制の整備が急務です。

4月18日付け読売新聞 「民泊経営が移住の手段に」――。大阪で中国系民泊急増、SNSに「ビザ取得は簡単」
「日本に移住する中国人が急増している。特に目立っているのが、経営者向けの在留資格「経営・管理ビザ」を取得して移住する中国人だ。経営・管理ビザは資本金500万円以上を用意し、事業所などを確保すれば取得できる。中国のSNSでは「年齢、学歴、言葉の厳しい要件はない」などと手軽さを強調し、日本への移住を指南する投稿があふれている。」

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法人設立・ビザ制度の“制度的抜け道”の悪用の阻止

  • 一部の事業家は、日本の法人設立制度や「経営・管理」ビザの要件を形式的に満たしながら、実態の乏しい事業で長期滞在を得ようとする例も見られます。
  • 特に日本では比較的簡便に法人設立が可能であることから、制度の健全性と信頼性を損なうおそれもあります。

第1章:基本姿勢

  • 「支援と牽制」の両立を原則とする
    → 中国人起業家を無条件に受け入れるのではなく、地域にとって有益な存在かを見極めた上で、手続支援を行う。
  • 制度の“抜け道利用”を防ぐゲートキーパーとしての役割を自覚
    → 書類の整合性だけでなく、申請人の事業意図や実態に対する「職業的な違和感」を見逃さない。

第2章:事前相談時のヒアリング項目とチェックポイント

🟡【ヒアリングすべき核心項目】

項目チェックポイント
事業の動機日本でなければならない理由が説明できるか?単なる資産逃避目的でないか?
資本金の由来資金の出所・入金ルートが明確か?マネロン的観点も確認。
事務所の実態不自然に高額な賃貸物件やバーチャルオフィスではないか?
従業員雇用計画雇用予定の職種・人数・日本人比率を具体的に説明できるか?
ターゲット市場中国人に偏りすぎていないか?地域住民との接点があるか?

第3章:書類作成・提出段階での注意点

  • 事業計画書の精査
     → 市場調査・資金繰り・人材計画の実現性を専門家視点でチェック。
     → 文化・景観配慮の有無も評価要素とする。
  • 契約書・見積書の信頼性確認
     → 開業前の業務委託契約書、賃貸借契約書、内装工事見積などが不自然でないか。
     → 賃貸契約に「住居目的」が混在していないかも確認。
  • 地域貢献項目の明示
     → たとえば「地元食材を使った商品開発」や「地域行事への協力方針」など。

第4章:申請後・開業後の警戒フォロー体制

  • 行政書士の「開業後支援契約」も提案
     → 開業後1年間の顧問的支援(月1回面談・報告義務)を契約化して制度監視に貢献。
  • 警戒面での連携強化
     → 税理士・社労士・不動産業者・地域商工会などとチームで中国人起業家の警戒にあたる体制を推進。
  • 不正・偽装の兆候があれば関係機関と情報共有
     → 入管への通報だけでなく、自治体との連携報告も視野に。

第5章:京都地域特有の観点

  • 京町家・景観条例・文化財保護制度の知識習得
     → 法律上の決まりごとを理解するだけでなく、地域の雰囲気や住民の感覚をくみ取る「場の空気を読む力」も求められる。
  • 地域住民や商店街との合意形成サポート
     → 「開業前説明会」の開催支援や地域団体との関係構築サポートも行政書士が担う。
  • インバウンド特化型事業のリスク把握
     → 観光政策変更・国際情勢で事業基盤が一気に揺らぐ脆弱性への備えも確認。

※行政書士自身のためのリスクヘッジ

  • 業務記録・ヒアリングシートは詳細に保存(不正事案への巻き込まれ防止)
  • 国語書類の翻訳は専門家に依頼、誤訳責任を回避
  • 必要に応じて“業務拒否”を明文化できる規定整備
  • SNS等での“起業支援キャンペーン”は慎重に

京都府行政書士会国際業務部における在留資格『経営・管理』の研修において、中国人起業家への警戒策としての経済安全保障について議論されたことがありません。
その点が見落とされてきたことは、極めて遺憾です。