京都の伝統と歴史は、長い年月をかけて築かれた街並みや文化に宿る人々の営みによって支えられてきました。しかし近年、インバウンド需要の高まりや中国人起業家の投資活動は、表層的な経済効果をもたらす一方で、地域社会や伝統文化に歪みを与えつつあります。

行政書士として、この「崩壊」の構造に少なからず関与している現実を見過ごすわけにはいきません。
観光収入の増大は確かに一時的な活力をもたらしました。しかし、過度なホテル建設や民泊許可の乱発は、住民生活の基盤を脅かす副作用を生んでいます。生活道路に観光客の大型バスがひしめき合い、地域コミュニティの静けさは失われつつあります。
行政書士が関与する許認可手続きの迅速化は一見効率的ですが、地域の実情を十分に把握せずに許可を出せば、かえって過剰開発を助長しかねません。
中国人起業家による不動産や飲食業への投資は、資本注入という点では歓迎できる面があります。しかし、短期的な利益追求が優先されるあまり、街並みや景観にそぐわないデザインの建築物や店舗が増加しています。また、伝統産業や地元業者との十分な協働がないままビジネスを展開すると、文化的摩擦や地域社会の分断を招きかねません。
行政書士は、外国企業の法的手続きを円滑に進める立場にあるため、その過程で地域との調整や文化的配慮が欠けてはなりません。
単に書類を整え、要件を満たすだけでなく、地域住民の声に耳を傾ける姿勢が必要です。可視化された手続きフローや説明会の開催を通じて、許認可前にリスクや影響を共有し、共創の場を作ることが求められます。
行政書士会や業界団体は、伝統地区への開発行為についてガイドラインを整備すべきです。景観保全やコミュニティ維持を重視するチェックリストを導入し、許可審査の質を高めることで、開発と保全のバランスを取る役割を果たせます。
地方自治体、観光協会、地元事業者、そして観光客を巻き込んだフォーラムやワークショップを定期的に開催し、街づくりのビジョンを共有することが重要です。
行政書士はファシリテーターとして、公平な立場から対話を促進し、持続可能なまちづくりに貢献できます。
京都の街は今、大きな岐路に立たされています。インバウンドと外国人起業家の動きは、単なる経済指標では測れない社会的・文化的影響をもたらします。
行政書士として、法令遵守の枠を超え、地域の声と伝統文化を守る役割を自覚し、積極的に関与することが求められています。今こそ、批判的視点を糧にし、新たな価値を生み出す行動を始める時です。
京都府行政書士会の今後の対応に注目したい。
京都写真家としての想い
美しい京都は、壊したら戻らない。
かつての町家も、路地も、静けさも――
ファインダー越しに見つめた風景は、もう二度と撮れないかもしれない。
古いから壊す。儲かるから建てる。
文化とは、残す意志だ。
景観とは、暮らしの記憶だ。
私たち写真家は、ただ「残す」のではなく、
未来に「繋ぐ」ために、今この瞬間を記録している。
どうか、見失わないでほしい。
この街の美しさは、数字では測れない。
壊してしまえば、もう戻らないのだから。