初めて外国人労働者を雇用する企業が注意すべき労務管理の重要ポイント:入管法と労働基準法の徹底

外国人労働者の雇用は、人手不足解消や企業の国際化を促進する上で大きなメリットがあります。しかし、初めて外国人労働者を雇用する企業は、日本人労働者の雇用とは異なる「入管法関連の遵守」と「労働基準法の徹底」の2点について、特に細心の注意を払う必要があります。
目次
1. 🚨 入管法関連の遵守:不法就労の防止と適切な管理
出入国管理及び難民認定法(入管法)の遵守は、外国人労働者雇用の大前提であり、違反すると企業側にも罰則(不法就労助長罪など)が科せられる可能性があります。
📌 厳守すべき重要事項
- 在留資格の確認と管理の徹底
- 就労可否の確認: 雇用前に必ず在留カードの原本を提示してもらい、「在留資格」、「在留期間」、および「就労の可否」を確認します。
- 「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ方は、原則として就労が制限されていますが、「資格外活動許可」があれば、週28時間以内などの制限付きで就労可能です。この許可の有無と、裏面の制限事項も確認が必要です。
- 在留期間の管理: 在留期間が切れていないか、また更新時期を把握し、期限切れ(オーバーステイ)での就労とならないよう、企業側も管理体制を整える必要があります。オーバーステイの労働者を働かせると、不法就労助長罪に問われます。
- 在留資格と職務内容の一致: 雇用する外国人の持つ在留資格(例:「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」)で認められている活動範囲(職務内容)と、実際に担当させる仕事が合致しているかを確認します。
- 現在、日本には職を求める多くの外国人が滞在していますが、これらの者についても、在留資格と職務内容の一致が強く求められます。
- 就労可否の確認: 雇用前に必ず在留カードの原本を提示してもらい、「在留資格」、「在留期間」、および「就労の可否」を確認します。
- 外国人雇用状況の届出
- 外国人労働者の雇い入れや離職の際には、ハローワークへ届出(外国人雇用状況届出)を行う義務があります。届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合も、罰則の対象となります(30万円以下の罰金)。
企業が負うリスクと罰則
在留資格と職務内容の不一致によって外国人が不法就労活動を行った場合、企業(事業主)には以下のような極めて重大なリスクが伴います。
・不法就労助長罪の罰則:外国人労働者に不法就労活動をさせた企業は不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。
(注)法改正により、罰則が5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に厳罰化されることが決定しており、一層の注意が必要です。
・企業の信用失墜: 法令違反による行政処分や企業名の公表は、企業の社会的な信用を大きく損ないます。
✅ 企業が取るべき具体的対応
外国人を雇用する企業は、以下の対策を徹底する必要があります。
- 在留カードの確認と記録:
- 雇用前に必ず在留カードの原本を提示してもらい、「在留資格」「在留期間」を確認し、そのコピーを保管します。
- 特に「技術・人文知識・国際業務」など職務内容が限定される資格や、「留学」「家族滞在」など資格外活動許可で就労する者については、裏面の就労制限や活動内容を細かくチェックします。
- 職務内容の適合性の確認:
- 予定している仕事内容が、その外国人の在留資格で認められた活動に完全に該当するかを慎重に判断します。単純労働が大半を占める業務は原則不可です。
- 在留資格「技術・人文知識・国際業務」の場合、本人の学歴・職歴とこれから行う職務内容との関連性も審査の重要なポイントとなります。
- 「就労資格証明書」の活用:
- 採用後に外国人労働者が居住地を管轄する地方出入国在留管理官署に「就労資格証明書」の交付申請を行うことで、予定の職務内容が在留資格の範囲内であることを確認できます。これは企業にとって、不法就労リスクを回避するための強力な担保となります。

2. ⚖️ 労働基準法の徹底:日本人と同等の労働条件の確保
外国人労働者も、日本人労働者と同様に労働基準法やその他の日本の労働関係法令が適用されます。国籍を理由とした不当な差別的取り扱いは一切許されません。
📌 遵守すべき重要事項
- 日本人と同等の労働条件の確保
- 賃金、労働時間、休日、休暇、安全衛生、災害補償など、すべての労働条件は日本人労働者と同等またはそれ以上に設定する必要があります。
- 特に、最低賃金を遵守し、不当に低い賃金を設定しないことが重要です。
- 残業代の支払いや有給休暇の付与についても、日本の法律に基づいて適切に対応します。
- 労働条件の明示と言語の配慮
- 労働契約の締結に際し、賃金や労働時間などの労働条件を明示することが義務付けられています。
- 外国人労働者が内容を正確に理解できるよう、母国語または容易に理解できる言語(日本語及び外国語)で作成された書面を交付することが望ましいです。
- 解雇等の制限の遵守
- 外国人労働者に対しても、解雇の予告、解雇権濫用の法理など、日本の解雇に関するルールが適用されます。安易な解雇は認められません。
💡 まとめ
外国人労働者の雇用は、「不法就労をさせない(入管法)」ことと「差別なく適正に処遇する(労働基準法)」ことの2つの側面から、法令遵守の徹底が求められます。特に初めて雇用する場合は、行政書士などの専門家を活用し、適正な手続きと労務管理の体制を確立することが、リスクを回避し、事業を安定させる鍵となります。
