届かない春の足音:日本語学校卒業を目前に控えた留学生の「崖っぷち」

留学生 就職先が見つからない

毎年この時期、日本語学校の教室には、重苦しい空気が漂う一角があります。出席率は優秀、日本語も日常会話には困らない。それでも、「内定」という二文字を手にできないまま卒業式を迎えようとしている留学生たちの姿です。

彼らの多くは、母国で大学を卒業し、あるいはキャリアを中断して、人生の勝負をかけて来日しました。しかし、日本の就職戦線の壁は、想像以上に高く、そして厚いのが現実です。

  1. 「N2」の壁と、語学力だけでは測れない「文化の溝」
    就職の最低条件とされる「日本語能力試験(JLPT)N2」。必死に勉強して合格を手にしても、面接の場では「日本特有のビジネスマナー」や「空気を読む対話」という、教科書には載っていない暗黙のルールに撥ね返されます。 「あなたの強みは?」という問いに、謙遜を美徳とする文化や、逆に自己主張を良しとする文化の違いが、面接官には「消極的」あるいは「自信過剰」と誤解されてしまう。そのズレを修正できないまま、不採用通知だけがメールボックスに溜まっていきます。
  2. 「特定技能」か「技・人・国」か。ビザという名の選別
    留学生を最も追い詰めるのは、在留資格(ビザ)の期限です。卒業と同時に、学生としての身分は消滅します。

「技術・人文知識・国際業務(技・人・国)」:大卒程度の学歴と、業務内容の整合性が厳しく問われます。

「特定技能」:人手不足の分野で門戸は広がったものの、試験のタイミングや職種のマッチングに苦戦する学生も少なくありません。

「仕事は見つかりそうか?」という家族からの期待に満ちたメッセージに、既読をつけられないまま夜を明かす。その孤独は、異国の地で独り立ちしようとする若者にはあまりに過酷です。

  1. 社会の「人手不足」と、彼らの「不採用」という矛盾
    日本社会は深刻な人手不足に喘いでいます。一方で、目の前にいる、日本を愛し、日本で働きたいと願う若者たちが、その「人手」としてカウントされる前に、手続きやミスマッチの壁に阻まれて帰国を余儀なくされる。これは、本人たちの悲劇であると同時に、受け入れ側である日本社会にとっても大きな損失ではないでしょうか。

残された時間は、あとわずか
卒業式まであと2カ月足らず。アルバイトを切り詰め、就職活動の交通費に充てる日々。 彼らが求めているのは、過度な同情ではありません。「日本で働きたい」という夢を、現実の「キャリア」として繋ぎ止めるための、ほんの少しのチャンスと理解です。

彼らの努力が報われ、この春、新しいスーツに身を包んで桜を見上げることができるのか。それとも、志半ばで海を渡り直すことになるのか。

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