近年、外国人材を正社員や契約社員として採用する企業が増えています。しかし、外国人社員の雇用において忘れてはならないのが「ビザ(在留資格)の更新」です。
在留期限が切れる前に更新手続きをしなければ、社員本人は不法滞在となり、企業も 不法就労助長罪 に問われる可能性があります。更新手続きでは、社員本人だけでなく、企業側が準備すべき書類 も数多く存在します。
この記事では、外国人社員のビザ更新に必要な会社側の書類を中心に、準備の流れや注意点を詳しく解説します。人事・総務担当者の方はぜひご一読ください。
目次
1. ビザ更新手続きの基本
在留期間更新許可申請とは?
外国人が持つ在留資格には、1年、3年、5年などの在留期間が設定されています。この期限が近づいた際に行うのが「在留期間更新許可申請」です。
更新手続きの時期
- 在留期限の 3か月前から申請可能
- 遅くとも期限の1か月前には準備を始めるのが望ましい
更新審査のポイント
- 本人の活動内容が在留資格に合っているか
- 安定した収入と生活基盤があるか
- 勤務先企業の経営状態に問題がないか
2. 会社側が用意すべき主な書類
在留資格の種類によって必要な書類は異なりますが、企業側が求められる書類には共通点があります。
① 在職証明書
- 外国人社員が現在、会社に在籍していることを証明する書類。
- 雇用形態、職務内容、勤務開始日を記載。
② 雇用契約書または労働条件通知書
- 更新後も同じ条件で雇用が継続されることを示す。
- 就労時間、給与額、職務内容を明記。
- 日本人社員と同等条件であることが望ましい。
③ 会社の登記事項証明書
- 法人の実在を証明する基本書類。
- 最新3か月以内のものを準備する必要あり。
④ 決算書類(直近の損益計算書・貸借対照表)
- 企業の経営状態を示す資料。
- 赤字の場合は不許可リスクが高まるため、補足説明が必要。
⑤ 源泉徴収簿・給与支払明細書
- 外国人社員が適正に給与を得ているか確認される。
- 源泉徴収簿は1年分、給与明細は直近数か月分を提出することが多い。
⑥ 納税証明書(法人税、消費税など)
- 企業が適切に納税しているかを証明する書類。
- 税務署で取得可能。
⑦ 事業内容説明書(必要に応じて)
- 会社の事業概要、取引先、従業員数などを記載。
- 特に新設企業や赤字企業の場合に求められるケースが多い。
3. 在留資格ごとの必要書類の違い
技術・人文知識・国際業務の場合
- 雇用契約書
- 在職証明書
- 会社登記事項証明書
- 決算書、納税証明書
- 社員の職務内容が専門性を有していることを示す資料
経営・管理の場合
- 会社の事業計画書
- 決算書・納税証明書
- 事業の継続性を示す取引先資料
- 事務所の賃貸借契約書
高度専門職の場合
- 上記に加え、学歴・職歴・年収に関する証明書類
- ポイント制を満たしていることを示す資料
4. 書類準備でよくあるトラブル
会社側の協力が遅れる
- 総務担当者が外国人社員の更新期限を把握していないケース。
- 提出が遅れると不法滞在リスクにつながる。
決算が赤字で不許可リスク
- 赤字でも必ず不許可になるわけではないが、継続性の説明資料が必要。
雇用契約書の記載不備
- 職務内容が曖昧で「単純労働」と誤解されるケース。
- 「営業」「販売」だけでは弱く、「外国語を活用した営業業務」など具体性が必要。
5. 企業が取るべき実務対応
- 社員リストで在留期限を管理
- 社員ごとに在留期限をExcel等で管理し、更新予定をリマインドする。
- 書類フォーマットを整備
- 在職証明書、雇用契約書は定型フォーマットを用意しておく。
- 決算書類・納税証明書の準備を毎年ルーチン化
- 更新時に慌てないよう、毎年度の決算終了後に保存しておく。
- 行政書士との連携
- 更新書類はケースごとに微妙な差異があるため、専門家にチェックを依頼すると安心。
6. 行政書士に依頼するメリット
- 不許可リスクを事前に診断できる
- 書類不備や記載ミスを防げる
- 会社側の負担を軽減できる
- まとめて複数の社員の更新を依頼できる
まとめ
外国人社員のビザ更新では、社員本人だけでなく、企業側が準備する書類が重要な審査材料 となります。在職証明書や雇用契約書、会社の財務資料や納税証明書など、準備には時間がかかるものも多いため、余裕を持った対応が不可欠です。
不許可リスクを避け、安心して外国人社員に働き続けてもらうためには、企業の管理体制と専門家のサポートが欠かせません。
当事務所では、外国人社員の在留資格更新に必要な書類の準備から申請サポートまで一貫して対応しています。社員の在留期限が迫っている企業様は、ぜひお早めにご相談ください。