増加する外国人顧客からのカスタマーハラスメント ~行政書士が知っておくべき実例と具体的な対策~

1.なぜ今、行政書士が外国人カスハラに直面するのか
2024年の在留外国人数は約340万人(出入国在留管理庁発表)、過去最高を更新。 入管法改正(2019年)以降、特定技能・技術・人文知識・国際業務・家族滞在などの在留資格申請が急増し、行政書士の外国人業務はもはや「選択肢」ではなく「日常業務」になりました。
一方で、言語・文化・法制度の違いから、外国人顧客特有のハラスメント(以下「外国人カスハラ」)が目立つようになっています。
【実例の一部】
- 「許可が出なかったら殺す」「事務所を燃やす」と殺害・放火予告(特定技能・飲食)
- LINEで深夜2時~4時に100件以上の連続メッセージ、既読がつくまで電話攻撃
- 「日本は差別国家だ」「人権侵害で大使館に通報する」と脅迫し、報酬を0円にさせようとする
- 女性行政書士に対し「俺のビザ取れたら結婚してやる」「一緒に寝たら許可出る?」などのセクハラ
- 許可却下が決まった途端に「金返せ」「詐欺だ」と事務所に押し掛け、土下座強要
2.外国人カスハラの3大特徴
① 感情の爆発が早い 母国の行政手続きは「金さえ払えば通る」と思っている顧客が多く、入管の裁量審査を理解していない。
② 報復手段を過剰に持っていると錯覚している 「大使館に言う」「在留資格取り消してやる」「SNSで事務所を炎上させる」など。
③ 言語の壁で「記録」が残りにくい 口頭での威迫が多く、録音・録画を嫌がる傾向がある。
3.行政書士が今すぐできる予防策(5選)
(1) 初回相談は完全有料化・オンライン限定 無料相談をやめ、30分5,500円~11,000円に設定。Zoomは録画必須(同意書取得)。
(2) 契約書・重要事項説明書に「ハラスメント条項」を明記 例:「威迫行為・暴言・深夜連絡・性的発言があった場合、即時契約解除+違約金20万円+警察への被害届提出を行う」と記載。
(3) 受任前に「入管審査は100%保証できない」ことを3言語で書面交付 英語・中国語(簡体字)・ベトナム語のテンプレートは行政書士会や入管専門行政書士の有志が無料公開しています。
(4) LINE公式アカウントは使わない 個人LINEは絶対NG。ビジネス用はChatworkやSignalなど、ログが残りブロックしやすいツールに限定。
(5) 事務所住所はバーチャルオフィス+私書箱化 実際に殺害予告を受けて自宅事務所を急遽移転した同僚が2025年に複数報告されています。
4.実際に起きた時の初動対応フローチャート
- 暴言・脅迫を受けた瞬間 → 即座に「録音中です」「警察に相談します」と宣言 → 会話終了→即ブロック
- 内容を「日時・発言内容・スクリーンショット付き」でメモ作成
- 翌営業日までに必ず警察へ相談(最寄りの生活安全課) → 診断書が取れれば「脅迫罪(刑法222条)」で被害届受理実績多数
- 行政書士会・入管専門部会に報告(匿名可) → 同会では2025年から「外国人カスハラ110番」を試験運用中
- 顧問弁護士がいれば即連絡 → 内容証明郵便で「今後の接触禁止+慰謝料請求」を送付(実績:50~150万円で和解)
5.最後に~同業者だからこそ共有したいこと
「ビザが下りなかったのは自分のせいではない」 これを胸に刻んでください。
入管審査は行政書士の責任範囲外です。 理不尽な要求を受けても「自分が悪い」と自分を責める必要は一切ありません。
実際に殺害予告を受けた行政書士が「もう外国人業務をやめたい」と廃業寸前になった事例を、私は2025年に3件知っています。 早期に警察・会・弁護士につなげば、ほぼ100%守られます。
「外国人顧客=リスクが高い」ではなく 「外国人顧客+予防策なし=リスクが高い」
この一言に尽きます。
同業者の皆さん、ぜひ今日から「有料相談」「録画必須」「ハラスメント条項」を導入してください。 あなたの事務所と、あなた自身の心を守るために。
