京都海外ビジネスセンターのスタートアップビザ支援:留学生起業家育成の抜本改革を提言

京都海外ビジネスセンターは、京都の国際化と経済活性化を担う重要な機関として、スタートアップビザの支援機関に位置づけられています。
しかし、留学生を対象とした起業支援の現状を振り返ると、強い懸念を抱かざるを得ません。行政の施策が「大山鳴動して鼠一匹」に終わってしまうリスクが高く、真に京都経済に貢献する外国人材を育成するための抜本的な改革が求められます。
本コラムでは、行政書士の視点から、センターのあるべき姿と役割について、留学生支援の改善策を中心に提言します。
1. 支援対象の分離と「二階建ての支援体制」の構築
起業を志す外国人の状況は多様です。特に留学生は、既に事業計画や資金を持つ経験豊富な外国人とは異なり、独自の課題を抱えています。これらを一律に扱う現行の支援は非効率的であり、成功率を低下させる要因となっています。そこで、支援対象を「留学生」と「既に事業計画を持つ外国人」に明確に分離し、それぞれに適した「二階建ての支援体制」を構築することを強く推奨します。
留学生が直面する主な課題は以下の3点です:
- 信用力の不足:日本での滞在歴が短く、金融機関や投資家からの信頼を得にくい。
- 資金力の不足:初期資金の確保が難しく、事業の基盤を築けない。
- 事業実績の欠如:経営経験や業界知識が不足し、ビジネスプランの現実性が低い。
これらの課題を無視して、同じ支援プログラムを適用するのは、資源の無駄遣いです。留学生は「これから育てる」存在として、一階部分の育成プログラムを別途設けるべきです。例えば、基礎的なビジネス教育、資金調達のワークショップ、またはメンターシップを重視した長期支援です。一方、二階部分は事業計画を持つ層向けに、資金援助やネットワーク構築を焦点に据えます。この体制により、センターは効率的に人材を育成し、京都のイノベーションエコシステムを強化する役割を果たせます。

2. 現行スタートアップビザ支援の問題点と厳格化の必要性
国の「経営・管理」ビザは、質の高い起業家を選別するための厳格な基準を設けています。これは、真に競争力のあるベンチャーを育成する意図によるものです。しかし、スタートアップビザの支援では、この基準が緩められがちで、行政側の「善意の甘い対応」が問題視されます。結果として、支援が一時的な「お砂場遊び」のような軽いものになり、京都経済への本質的な貢献が薄れてしまいます。
行政書士として、京都海外ビジネスセンターに期待する役割は、支援の質を担保する「ゲートキーパー」となることです。
具体的改善策として、以下の3点を提言します:
① 資金計画の厳格なチェック:申請時に3,000万円の資金源を確実に証明できない場合、支援を即座に拒否。これにより、無駄な行政コストと失敗リスクを防ぎます。
② 特定活動ビザ期間中の徹底指導:ビザ期間中に「経営・管理」ビザへの移行要件をクリアするためのアドバイスを強化。ビジネススキル向上のための定期的なレビューやコンサルティングを義務化します。
③ 移行時の厳格確認と証明書発行:移行要件を満たしたことをセンターが確認し、「移行確約証明書」を発行。これを入管局提出書類に義務付けることで、質の高い起業家のみを選別します。
このような厳格化により、センターはグローバル競争力のあるエリート起業家に支援を絞り、京都経済を牽引する人材を育成するプログラムへと進化します。単なる支援機関ではなく、質の高いフィルターとして機能する姿が理想です。
結論:厳格な審査・育成体制の構築へ
もし京都海外ビジネスセンターが、このような厳格な審査・育成体制を構築・実行できない場合、現行のスタートアップビザ支援機関としての役割や姿勢を再考する時期に来ているのかもしれません。
留学生の起業支援は、京都の未来を担う投資です。行政、企業、支援機関が連携し、真の改革を実現することで、国際的なイノベーターを輩出する拠点となるでしょう。本提言が、センターの前向きな検討につながることを願っています。
